トラック運転手は、車の運転が好きな人や、一人で黙々と仕事に集中したい方におすすめの職業です。最近では、街中を小型トラックで走行するルート内配送も多く、トラック運転手の仕事がより身近に感じられるようになってきています。本記事では、そんなトラック運転手の給与事情を調査。平均月収や給与を左右する要因、働きながら給与をあげる方法について解説します。
トラック運転手の給与事業!高所得って本当?
全日本トラック協会の調査による「2022年度版トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」のデータをもとに、トラック運転手の月収を男女・年代・車種にわけて紹介します。
男女別の平均月収・年収
男性トラック運転手 | 34万400円 |
女性トラック運転手 | 26万1400円 |
男性トラック運転手と女性トラック運転手には平均して約8万円の月収差があります。これは、出産や育児といった女性特有のライフステージの変化や、時短勤務をしている方が多いことなどが要因として考えられます。
また、正社員のトラックドライバーには企業によって賞与(ボーナス)が支給されます。賃金と賞与を合わせた月収の平均は下記の通りです。
男性トラック運転手 | 39万5300円 |
女性トラック運転手 | 30万3300円 |
この数値を12倍したものがトラックドライバーの平均年収です。男性の場合は約470万円、女性の場合は約360万円が年収の平均値となります。
年代別の平均月収
20~29歳 | 30~39歳 | 40~49歳 | 50~59歳 | 60~64歳 | |
男性運転手 | 32万4400円 | 37万9800円 | 40万7900円 | 41万2600円 | 35万7200円 |
女性運転手 | 30万5800円 | 29万9800円 | 30万5100円 | 30万4700円 | 30万7200円 |
男女ともに、年代別でみるとあまり大きな変化はありません。トラック運転手の月収は、年齢や勤続年数よりも、運転する車種や給与形態に大きく左右されるといえるでしょう。
車種別の平均月収
普通 | 準中型 | 中型 | 大型 | けん引 | |
男性運転手 | 32万5000円 | 33万円 | 30万2100円 | 37万2400円 | 36万7200円 |
女性運転手 | 22万3500円 | 23万9400円 | 25万2400円 | 30万8300円 | 31万5400円 |
車種別に比べると、運転技術が必要な車種ほど月収が高くなる傾向にあります。また、大型車は比較的長距離走ることが多いため、走行距離によって月収の差が生じます。
固定給?歩合給?トラック運転手の給与形態
トラック運転手に適用される給与形態は、大きく分けて3パターンあります。
固定給
固定給とは、一定時間の労働に対して一定額の賃金が支払われる給与体系のことです。例えば、週40時間の労働時間が契約されている場合、その時間に基づいて給与が支払われます。この方式では、労働時間や走行距離にかかわらず一定の給与が保証されるため、収入の安定性があります。一方で、多く走行した場合や効率よく配送した場合も働き方が報酬に反映されないといったデメリットも。固定給は、一般的にルート配送をメインにおこなう物流企業において多くみられます。
歩合給
歩合給とは、業績や成果によって給料額が変動する給与形態のことです。トラック運転手が運んだ貨物や走行距離に基づいて算出されます。走行距離や貨物の量が多いほど、トラック運転手の収入も増える仕組みです。頑張った分だけ給料に反映されるためやりがいがありますが、情勢や天候に左右されるため、給料が安定しにくいといったデメリットもあります。一般的に、長距離輸送や急配などをメインにおこなう企業において多くみられます。
固定給+歩合給
運送業界で多く採用されているのが、「固定給+歩合給」の給与形態です。労働時間に基づいて固定給を支払いつつ、同時に貨物の量や距離に応じて報酬を支給します。この給与形態では、給与の安定性と成果に応じた報酬を両立させることが可能です。しかし、建前上は「固定給+歩合給」であったとしても、固定給が低額で、給与の大半を歩合給が占めているというケースも少なくありません。
大手運送会社の給与形態や働き方を比較
トラック運転手の給料は、性別や年齢よりも運転する車種や給与形態に左右されることがわかりました。それだけでなく、勤める企業によっても給与水準は大きく異なります。ここでは、代表的な運送会社2社を例に、それぞれの給与水準や働き方を比較します。
ヤマト運輸の給与
「クロネコヤマト」でおなじみのヤマト運輸は、日本国内外で物流サービスを展開する大手運送会社です。東京丸の内営業所のセールスドライバー(正社員)の求人情報によると、基本給は22万2000円~22万9000円と記載されています。月25時間分の残業手当を含めると、月収モデルは36万6000円です。
佐川急便の給与
佐川急便もヤマト運輸と同じく、日本国内外で物流サービスを展開している大手運送会社です。東京営業所のセールスドライバー(正社員)の求人情報によると、基本給は227,800円~267,800円と記載されています。月50時間分の残業手当、住宅手当などの諸手当を含むと、月収モデルは309,000円~424,000円です。ヤマト運輸と基本給は大きく変わりませんが、求人情報に記載されている月の平均残業時間がヤマト運輸よりも多いため、残業手当で月収に差が生じています。
働き方の比較
勤務時間 | 休日 | 残業時間 | 賞与 | 昇給 | |
ヤマト運輸 | 8時間 (シフト制) | 月9~11日 | 月25時間程度 | 年2回 | 年2回 |
佐川急便 | 8時間 (7時~16時) | 月9日 | 月50時間程度 | 年2回 | 年2回 |
比較すると、ヤマト運輸も佐川急便も待遇に大きな差はありません。ただし、このデータはあくまで東京都市部の営業所の求人情報をもとにしているため、勤務地や仕事内容によって違いが生じます。
トラック運転手の給与アップ戦略
トラック運転手が働きながら給与をあげるための方法をお伝えします。
免許をとって幅を広げる
トラック運転手が給与をアップさせるための戦略の一つは、免許を取得して運転できる車両の種類や範囲を広げることです。未経験の人はまず普通車での業務からスタートし、働きながら中型車、大型車、けん引車などの免許を取得しましょう。フォークリフトやクレーンなどの重機の免許を取得することも、運転手としての市場価値を高める手段の一つとなります。企業によっては免許取得を補助する手当や講習もあるので、そういった制度を活用するのもおすすめです。
会社・給与形態を変える
給与をアップさせるためには、転職や給与形態の変更を検討することも重要です。競争の激しい運送業界では、一部の企業が他社よりも高い給与や福利厚生を提供してドライバーを集めています。また、固定給から歩合給もしくはハイブリッド型へ給与形態を変更することで、成果に応じた報酬を得るチャンスが広がります。自営業として独立することも一つの案ではありますが、リスクや責任が伴うことを理解しておく必要があります。
運転以外の周辺スキルを磨く
運転以外のスキルを磨くことも給与アップにつながります。例えば人事管理や貨物管理などのスキルを習得することで、管理職へのキャリアアップも目指せます。データ管理や顧客対応などのビジネススキルを身につけることも、将来のキャリアアップや給与アップにつながるでしょう。トラック運転手は物流や輸送業界における重要な役割を果たしているため、幅広いスキルを持つことで将来のキャリアの選択肢が広がります。
免許取得がキャリアアップへの近道に
従来のトラック運転手の給与事情は、とにかく長距離を走るほど稼げるという仕組みでした。しかし、法改正により時間外労働の制限がある今、トラック運転手の働き方にも変化が求められています。免許を取得し運転できる車種の幅を広げることが、キャリアアップへの近道です。免許取得を補助する制度や講習を積極的におこなっている企業も増えてきているので、それらを踏まえた上で求人を比較してみましょう。