「トラック運転手への転職を考えているけれど、実際どれくらい稼げるのかわからない」「年収1000万円稼げるのは本当?」といった疑問をお持ちの方は少なくないでしょう。
本記事では、トラック運転手のリアルな給与事情をはじめ、2024年問題をふまえた今後のキャリアパスや、未経験から高収入を目指す方法について解説します。
トラック運転手の年収平均
トラック運転手の平均年収は、性別・車種・年代・地域によってことなります。全日本トラック協会の調査による「2022年度版トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」のデータをもとに、それぞれの給与を比較します。
賞与なし | 賞与あり | |
男性トラック運転手 | 34万400円 | 39万5300円 |
女性トラック運転手 | 26万1400円 | 30万3300円 |
男性トラック運転手の平均月収は34万400円、女性トラック運転手の平均月収は26万1400円です。また、正社員のトラックドライバーには企業によって賞与(ボーナス)が支給されることもあり、それぞれ賃金と賞与を合わせた月収は、男性トラック運転手が39万5300円、女性トラック運転手が30万3300円になります。
いずれも、特別積合せ貨物運送事業者に勤めるけん引・大型・中型・準中型・普通車の運転手の月収を合計した平均値です。
この数値を12倍したものがトラックドライバーの平均年収となるため、男性の場合は約470万円、女性の場合は約360万円が年収の平均値となります。
男性トラック運転手と女性トラック運転手の間には、月収にして約8万円、年収にして約110万円の差がありますが、これは、出産や育児といった女性特有のライフステージの変化や、時短勤務をしている方が多いことなどが要因として考えられます。
車種別の平均給与
トラック運転手の給与は、運転する車種によっても異なります。一般的に普通車、準中型車、中型車、大型車、けん引車の5つに分類され、普通車は近距離、準中型・中型車は近~中距離、大型車とけん引車は遠方への運送によく使われます。
トラック運転手の給与は運送する荷物の量や走行距離によっても左右されるため、車種ごとの月収を比べると以下のようになります。
普通 | 準中型 | 中型 | 大型 | けん引 | |
男性運転手 | 39万2100円 | 38万8000円 | 35万300円 | 42万1200円 | 43万2600円 |
女性運転手 | 26万3200円 | 28万3700円 | 29万7700円 | 34万6500円 | 35万5300円 |
運転技術や免許が必要な車種ほど月収が高くなります。また、大型車は比較的長距離を走行し、一度に運べる荷物の量も多いため、普通車と比べると3~8万円程給与に差が生じます。年収にすると以下の通りです。
普通 | 準中型 | 中型 | 大型 | けん引 | |
男性運転手 | 470万円 | 465万円 | 420万円 | 505万円 | 519万円 |
女性運転手 | 315万円 | 340万円 | 357万円 | 415万円 | 426万円 |
年代別の平均給与
トラック運転手の給与は車種による差が大きいため、20代であっても大型車の運転手であれば給与が高くなります。
20~29歳 | 30~39歳 | 40~49歳 | 50~59歳 | 60~64歳 | |
男性運転手 | 32万4400円 | 37万9800円 | 40万7900円 | 41万2600円 | 35万7200円 |
女性運転手 | 30万5800円 | 29万9800円 | 30万5100円 | 30万4700円 | 30万7200円 |
男女ともに、年代別で比較すると大きな変化はありません。トラック運転手の給与は年齢や勤続年数よりも、運転する車種やスキルに大きく左右されるといえるでしょう。年収にすると以下の通りです。
20~29歳 | 30~39歳 | 40~49歳 | 50~59歳 | 60~64歳 | |
男性運転手 | 389万円 | 455万円 | 489万円 | 495万円 | 428万円 |
女性運転手 | 366万円 | 359万円 | 366万円 | 365万円 | 368万円 |
地域別の平均年収
他の職業と同様に、勤務先が大都市である程給与が高い傾向にあります。
東北 | 関東 | 中部 | 近畿 | 九州 | |
男性運転手 | 32万7100円 | 41万7500円 | 36万6000円 | 39万4600円 | 35万9800円 |
女性運転手 | 26万6700円 | 29万3400円 | 34万3000円 | 35万900円 | 27万9000円 |
男性トラック運転手の場合は、東京・名古屋・大阪などの大都市では月収が30万円台後半~40万円台に乗るのに対し、地方都市は30万円前後とやや低くなります。女性トラック運転手は中部・近畿地方の給与が高く、需要があります。年収にすると以下の通りです。
東北 | 関東 | 中部 | 近畿 | 九州 | |
男性運転手 | 392万円 | 501万円 | 489万円 | 473万円 | 431万円 |
女性運転手 | 320万円 | 352万円 | 411万円 | 421万円 | 334万円 |
トラック運転手で年収1000万円は実現できる?
トラック運転手=きつい仕事というイメージを持つ方がいる一方で、「仕事が大変な分高収入なのでは?」と疑問に思っている方も多いですよね。ひと昔前は1000万円近く稼ぐトラック運転手もいましたが、現在、トラック運転手として年収1000万円を目指すのは難しいといわれています。
2024年問題は収入に影響するか
2024年問題とは、2024年4月より施行された働き方改革関連法によって生じる、物流・運送業界の課題のことです。この法改正により時間外労働が制限され、1日に運べる荷物量の減少、ドライバーの収入減、ドライバー不足の加速などが懸念されています。
時間外労働が制限されることによりドライバーは休みを取りやすくなり、「生活が不規則」、「休みがなかなかとれない」、「長時間労働」といったトラック運転手へのマイナスイメージが払拭されるかもしれません。
一方で、時間外労働が常態化している運送業界では、残業手当の支給を前提として給与体系を組んでいることも少なくありません。労働時間が制限されることで時間外手当や残業手当がもらえなくなってしまうと、ドライバーの給料は一気に減少してしまいます。
先述した通り、トラック運転手の給与は「車種」、「荷物量」、そして「走行距離」によって算出されるのが一般的です。従来のトラック運転手の給与体系は、とにかく走れば走るほど給与が高くなるシステムでしたが、このような背景から今まで通りの稼ぎ方は難しく、トラック運転手が年収1000万円を目指すのは難しいといえるでしょう。
トラック運転手で高収入を目指す具体的な方法
では、トラック運転手でなるべく高収入を目指すには具体的にどうしたらよいのでしょうか。未経験からスタートした場合のキャリアパスを紹介します。
免許を取得する
未経験からスタートした場合は、まず普通車(小型トラック)の運転から始まり、働きながら中型車・大型車の免許取得を目指しましょう。大型免許まで取得したら、タンクローリーやけん引車の免許を追加で取得するのもおすすめです。これらは一般的に需要が高く、報酬も高額に設定されていることがあります。
また、免許を取得することで手当がつくことも。仕事の幅を広げるためにも、新たな免許取得にチャレンジしてキャリアアップを目指すのが、高収入への一番の近道です。
賞与実績のある大手運送会社で働く
賞与や手当などの制度が整っている大手運送会社で働くことも、高収入を得るための一つの手段となります。求人情報に支給実績が掲載されていることもあるため、チェックしてみましょう。
また、免許取得にかかる費用の負担や、資格取得を応援する体制が整っているかも、高収入を目指すために重要なポイントです。
役職手当や資格手当でベースアップ
一部の大手運送会社では、基本給に上乗せで役職手当や資格手当などが支給されます。危険物取扱者やフォークリフト技能者といった資格の取得、将来的に管理職を目指すのであれば運行管理者の資格がおすすめです。
経験を積んで独立する
トラック運転手として経験を積んだ後、独立して自営業として働くことも高収入を得る方法の一つです。ただし、独立するには車両の購入や保険などの費用がかかるため、事前の計画と資金調達が必要です。
トラック運転手の高収入求人はここに注意
高収入を目指すための方法をお伝えしましたが、「それなら基本給が高いところで働けばいいのでは?」と思った方も多いはず。求人の中には魅力的な給与を提示して募集している企業もありますが、高収入求人だからこそ応募する上で注意すべきことがあります。
休みが取りにくい
高収入を目指せる求人には、給与を高く提示する分休みを少なく設定したり、有給休暇を消化させてくれなかったりというケースがあります。法改正により労働時間は制限されますが、その分一日の仕事内容がハードになることが懸念されるでしょう。
残業代が支払われない
正社員ではなく業務委託として働く場合は、残業代が支払われないケースもあります。請負契約として雇用を結んだ場合、会社に対して残業代の支払い義務が発生しないため、労働時間に対し安い賃金で働くことになりかねません。
求人の掲載頻度
高収入であるにもかかわらず、求人の掲載頻度が高い企業は注意が必要です。人が定着しない理由として「仕事がきつい」、「給料と労働内容が見合わない」、「人間関係がよくない」といった理由が考えられます。
自分に合った方法で稼げるトラック運転手を目指して
働き方改革を皮切りに、物流・運送業界は今さまざまな問題に直面しています。昔のようにトラック運転手として1000万を目指すことは難しいですが、その反面ドライバーにとっては嬉しいメリットも。休みを取りやすくなるだけでなく、ライフステージに合わせて働き方を選べるようになってきています。
従来のトラック運転手には「長時間労働」、「過酷な仕事」というイメージがつきものでしたが、未経験の方でも入りやすいよう労働環境や待遇、教育制度を見直す企業が増えました。
未経験の方もぜひ一度求人をチェックしてはいかがでしょうか?