トラック運送業界には、ドライバー以外にも運行管理者という職種があります。運行管理者はドライバーの安全を守るための国家資格であり、取得すれば就職や転職、キャリアアップに役立つ可能性があります。実際に運行管理者になると、給料がどれくらいもらえるのか気になる人も少なくないでしょう。
本記事では、運行管理者の仕事内容と給料事情、やりがいと必要な資格について解説します。トラックドライバーからのキャリアアップを考えている人や、運行管理者に興味がある人はぜひ参考にしてください。
運行管理者とは
運行管理者とは、トラックドライバーと通行人の命を守り、かつ安全で確実な輸送を行うために運行管理を行う人物のことです。トラックドライバーと通行人の安全確保において、運行管理者は法律に基づいてドライバーの勤務時間を設定し、管理するという重要な役割を担っています。主な役割は次のとおりです。
- 乗務割の作成
- 乗務記録の管理
- 休憩・睡眠施設の保守管理
- ドライバーの健康状態の把握
- 安全指導
- トラックの保守管理 など
このように、トラックドライバーと運送に使用するトラックの保守管理、指揮を一手に担うのが運行管理者の仕事です。
なお、運行管理者はトラック事業者だけではなく、バス・タクシーの事業者にも配置義務があります。求められることはおおむね共通しており、ドライバーと通行人の安全を守る大事な仕事に変わりはありません。
運行管理者の給料
運行管理者の給料は、トラック事業者の企業規模や地域によって異なります。あくまでも平均的な参考値ですが、おおむね以下のとおりと考えましょう。
- 中小企業:年収300~400万円
- 大手企業:年収600~800万円
- パート・アルバイト:時給1,000円程度
- 派遣:時給1,300円程度
資格を取って間もない業務未経験者の段階では、初めから高給がもらえるわけではありません。ただ、実務経験を積んでいくことで、徐々に昇給していく可能性はあるでしょう。
ちなみに、トラックドライバーは平均年収が約450万円程度と言われています。運行管理者になると、業務上の責任は大きくなるものの、その分給料は増えると考えても良いかもしれません。
運行管理者はドライバーとの兼任で需要がある
人材不足という点においては、トラックドライバーに比べると運行管理者はそれほど深刻化していない状況です。もちろん企業によって有資格者がいない、もしくは退職してしまうという場合は優遇されますが、一般的な求人募集においては、ドライバーほど引く手あまたとは言い切れないでしょう。
そのため、場合によってはドライバーとの兼任を求められることもあり、純粋に運行管理者として働くことができない可能性があります。裏を返せば、トラックドライバーとしてのキャリアを持っている人であれば、需要は十分にあると考えても良いでしょう。
運行管理者のやりがい
運行管理者は大変な仕事である反面、大きなやりがいを持った仕事です。いくつか当てはまるものはありますが、代表的なものは以下の3つです。
- 国家資格保有者にしかできない仕事である
- 社会貢献性が高い
- 原則は内勤で肉体的負担が少ない
それぞれ詳しく見てみましょう。
国家資格保有者にしかできない仕事である
先述のとおり、運行管理者は国家資格であり、専門的な試験に合格しなければなりません。また、試験を受ける前から実務経験や基礎講習の修了などが求められる職業でもあります。誰にでも任せられるわけでなく、すぐには代わりを見つけられない仕事であることは事実です。
運行管理者は、営業所に配置された車両数に応じて規定人数を配置することが法律で義務付けられています。深刻な人手不足ではないものの、有資格者や経験者の需要があることに変わりません。社会的な需要が高まっているトラック運送業においては、非常に重要な存在と言えるでしょう。
社会貢献性が高い
運行管理者に求められる最も重要な役割は、事故を未然に防ぐことです。トラックドライバーの健康状態の確認はもちろん、運行するトラックの管理や休憩時間の策定などを担い、安全管理上、責任重大な役割と言えます。
トラックドライバーは、物流という消費者の暮らしの根幹を支える重要な仕事です。ドライバーを陰で支える運行管理者もまた、社会貢献性が高い職業と言えるでしょう。責任がある分、仕事へのやりがいや達成感を得ながら働くことができます。
原則は内勤で肉体的負担が少ない
トラックドライバーとの兼任を求められない限り、運行管理者は事務所内で業務を行います。そのため、長距離運転や積み荷の積み下ろしなどを担当することはなく、肉体的な負担が少ないという特徴があります。
肉体的な負担を伴う仕事の場合、どうしても年齢や体力の問題で長く続けづらいことも事実です。運行管理者のような内勤仕事であれば長期的に続けやすく、体力に自信がない人や女性でも活躍しやすい仕事環境であると言えます。
運行管理者になるために必要な資格
運行管理者になるには、試験に合格し、運行管理者資格者証を交付してもらわなければなりません。大まかな流れは、以下の表を参考にしてください。
受験資格は1年以上の運行管理に関する実務経験があるか、国土交通大臣認定の基礎講習を修了しているかのいずれかです。運行管理経験がなければ、基礎講習の修了は受験するうえでの必須条件になります。最終的には運行管理者試験を受験し、初めて運行管理者の資格が与えられます。
運行管理者とトラックドライバーは兼任できる?
運行管理者とトラックドライバーの兼務が可能かどうかは、トラック事業者が配置している人員次第になります。物理的に運行管理者がトラックドライバーの業務を行うことはできるものの、運行管理者が行う点呼は、自分自身ではできないためです。
別の運行管理者が在籍している、もしくは営業所内に運行管理補助者がいれば兼務できます。運行管理補助者とは、運行管理者の業務をサポートするために設置できる役職です。設置は任意ですが、設置する場合は運輸支局に届け出をしなければなりません。
運行管理者とトラックドライバーの兼任は、物理的には何ら問題はないことです。ただし、別の運行管理者や運行管理補助者がいなければ兼務できないことは理解しておきましょう。
運行管理者はキャリアアップ・キャリアチャレンジのひとつ
運行管理者は、トラックドライバーからキャリアアップ・キャリアチェンジを図るうえでの選択肢のひとつです。もちろんトラックドライバーの経験がなくても、運行管理補助者として実務経験を積んだり、基礎講習を受けたりして資格を取得することはできます。
責任は重大ですが、トラック運送業界になくてはならない存在が運行管理者でもあります。トラックドライバーからのキャリアアップや、新たなキャリアとして興味を持ったら、運行管理者にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。