トラック車検で不安なあなたへ
毎日、あなたのビジネスを支えている大切なパートナー、それがトラックです。しかし、トラックの車検が近づくたびに、「費用がいくらかかるんだろう？」「手続きが複雑で面倒ではないか？」「ディーラーに頼むべきか、それとも整備工場でいいのか？」といった不安や疑問が頭をよぎるのではないでしょうか。
乗用車に比べて車検サイクルが短く、整備箇所も多いトラックの車検は、費用も手間も格段にかかります。適切な準備をしないと、高額な整備費用を請求されたり、業務を停止せざるを得ない期間が長引いたりするリスクもあります。
ご安心ください。本記事は、トラックのオーナー様や運行管理者様が抱えるそんな不安を解消するために作成した「車検のすべて」を網羅した完全マニュアルです。
本記事を読むメリット
- あなたのトラックに適用される正しい車検の時期がわかります。
- 車種・トン数別の費用相場と内訳を理解し、不要な出費を抑える節約術が身につきます。
- 最適な「依頼先（ディーラー、整備工場など）」を見つける判断基準が得られます。
記事の結論（サマリー）
トラック車検は、適切な準備と場所選びさえ間違えなければ、費用も期間も最適化できます。このマニュアルで、次回の車検準備を今日から始めましょう。
トラック車検の「基本のキ」：期限と準備
まずは、トラックの車検制度の基本と、期限切れを防ぐための知識、そして車検時に必ず必要となる準備物について解説します。
トラックの種類別！車検の有効期限（時期）
トラックの車検有効期限は、積載量や登録区分によって乗用車よりも細かく定められています。特に事業用トラックは車検のサイクルが短いため、計画的な管理が不可欠です。
| 区分 | 初回 | 2回目以降 |
|---|---|---|
| 貨物：GVW8t以上 | 1年 | 1年 |
| 貨物：GVW8t未満 | 2年 | 1年 |
| 旅客運送事業用（バス・タクシー） | 1年 | 1年 |
| 貸渡（レンタカー） | 2年 | 1年 |
| 検査対象の軽貨物 | 2年 | 2年 |
車検時に必要な書類と準備物チェックリスト
車検をスムーズに進めるために、入庫前に以下の書類を必ず揃えておきましょう。
- 車検証（自動車検査証）: 現在有効なものが必要です。
- 自賠責保険証明書: 新しい車検期間をカバーする保険期間の証明書。
- 自動車税納税証明書: 最新年度の証明書。電子化が進んでいますが、念のため準備しておきましょう。
- 点検整備記録簿（あれば）: 過去の整備履歴があると、整備士が車両の状態を把握しやすくなります。
- 印鑑（認印）: 書類への捺印が必要な場合があります。
車検の「ベストな時期」はいつ？早すぎても遅すぎてもダメな理由
2025年4月1日（令和7年4月1日）から、車検は満了日の「2か月前」から受けても、残存の有効期間が切り捨てられません。 従来の「1か月前」からの取扱いが拡大されました。繁忙の年度末を避け、1～2か月前の計画受検を推奨します。
※自賠責保険の有効期間もこの変更に整合しました。
- 1ヶ月前の受検: 満了日の1ヶ月前に車検を受けても、次回の満了日は変わりません。つまり、有効期間を損することなく、余裕をもって車検を済ませることができます。
- 例: 満了日が10月20日の場合、9月21日から10月20日までの間に受検すれば、次回の満了日は翌年の10月20日になります。
- 期限切れ直前のリスク: 期限直前になると、万が一整備に時間がかかったり、部品の取り寄せが必要になったりした場合に、期限切れになってしまうリスクがあります。
- 車検満了後に公道を走行すると、無車検運行として道路運送車両法違反に当たり、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金等の対象になります（違反点数6点、免停処分あり）。
- 自賠責保険が切れている状態で運行すると、無保険運行として自動車損害賠償保障法違反に当たり、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金等の対象になります。
【費用徹底解説】トラック車検の相場と内訳
トラック車検の費用は、乗用車と比較して高額になる傾向があります。その費用を「法定費用」と「整備費用」の2つに分けて理解することが、節約の第一歩です。
トン数・車種別！トラック車検の費用相場一覧
トラックの車検費用は、車両の重量（トン数）と状態によって大きく変動します。あくまで目安ですが、以下の相場を参考にしてください。
| トラックの区分 | 車検費用の相場（目安） | 特徴と注意点 |
|---|---|---|
| 小型トラック（2t以下） | 約8万円 ～ 15万円 | 比較的乗用車に近い構造。部品代も安価になりやすい。 |
| 中型トラック（4tクラス） | 約10万円 ～ 25万円 | 整備項目が増え、費用に幅が出やすい。走行距離で変動大。 |
| 大型トラック（10t以上） | 約15万円 ～ 40万円以上 | 部品代が高額。整備箇所も多く、費用は最も高くなる。 |
車検費用の内訳（法定費用と整備費用の詳細）
車検で必ず支払う費用と、依頼先や車の状態によって変動する費用を区別しましょう。
法定費用＝自動車重量税・自賠責保険料・検査手数料（印紙）。同一条件の同一車両であればどこで受けても額は同じですが、年式や環境性能（減免）、用途区分、車両総重量などで税額・保険料は変わります。
これらに加えて、整備費用（部品・工賃）や代行手数料（ユーザー車検では不要）がかかるのが一般的です。
1. 法定費用（必ずかかる費用：依頼先による違いはなし）
法定費用は、国や保険会社に支払うもので、どの業者に依頼しても、またユーザー車検でも金額は変わりません。
- 自動車重量税: 車両の総重量に応じて支払う税金です。トラックは自家用・事業用やエコカー減税の有無によって細かく定められています。
- 自賠責保険料: すべての車両に加入が義務付けられている保険です。車検期間（1年または2年）分を一括で支払います。
- 検査手数料（印紙代）: 運輸支局での検査にかかる手数料です。
2. 整備費用・代行手数料（依頼先と車の状態により変動）
この費用が、車検業者選びで最も差が出る部分です。
- 基本点検料: 車検に合格するために必要な点検（50項目以上）の費用です。業者の技術料にあたります。
- 交換部品代: 劣化したブレーキパッド、オイル、フィルター、タイヤなどの交換費用です。トラックは部品単価が高くなりがちです。
- 整備工賃: 部品交換や修理にかかる作業費用です。
- 車検代行手数料: 業者に検査場への持ち込みや書類作成を代行してもらうための手数料です。（ユーザー車検の場合は不要）
【節約術】トラック車検の費用を安く抑える3つの方法
高額になりがちなトラックの車検費用を賢く抑えるための実践的な方法を3つご紹介します。
方法1: 複数の業者から必ず見積もりを取る
ディーラー、地域の整備工場、車検専門チェーンなど、複数の業者に同じ内容で見積もりを依頼することで、整備費用や代行手数料の差が明確になります。特に、工賃設定は業者によって大きく異なるため、比較検討は必須です。
方法2: 日頃の点検と消耗品の早期交換を徹底する
車検時に「急な故障」や「重整備」が必要になると、費用は一気に跳ね上がります。日頃からオイルやタイヤ、ブレーキなどの消耗品の状態を把握し、車検前に交換することで、車検時の追加整備を減らし、トータルコストを抑えることができます。
方法3: 不必要な「予防整備」は一旦断る
整備工場は、安全性のためにまだ使える部品の交換（予防整備）を勧めてくることがあります。事業用であれば安全性を最優先すべきですが、費用の都合上、「今回の車検に必須な整備」と「次回までに検討すれば良い予防整備」を明確に分け、後者は断るか、別の時期に実施するよう交渉しましょう。
どこに頼む？トラック車検の依頼先比較（場所）
トラックの車検は、依頼する場所によって費用、整備の質、期間が大きく異なります。ご自身のトラックの状況や予算、事業の形態に合わせて、最適な依頼先を選びましょう。
依頼先ごとのメリット・デメリット比較表
主な依頼先を比較し、それぞれの特徴をまとめました。
| 依頼先 | メリット | デメリット | こんな人におすすめ |
|---|---|---|---|
| トラックディーラー | 高い技術力、純正部品、手厚い保証、メーカー特有の知識 | 費用が高い、時間がかかる（混み具合による） | 品質・安全性を最優先、新車に近い、専門的な整備が必要なトラック |
| 指定整備工場 | 費用と品質のバランスが良い、柔軟な対応、事前見積もりが丁寧 | 工場によって技術力や得意な車種にばらつきがある | 費用も品質もバランス良く重視したい、地域の信頼できる業者に頼みたい |
| ユーザー車検 | 最も安い（法定費用のみ） | すべて自己責任、手間と時間が必要、不合格時の再検査リスクがある | 整備知識があり、トラックの状態に自信がある、費用最優先 |
車検専門チェーンと地域の整備工場、どっちが良い？
どちらのタイプの業者も選択肢となりますが、トラックの車検においては、専門性が高い地域の整備工場の方が適しているケースが多いです。
- 車検専門チェーン: スピードと料金の安さ（特に小型トラック）が魅力ですが、大型トラックの整備経験や設備が不足している場合があります。
- 地域の整備工場（特にトラック整備に強い業者）: トラック専門の設備と整備士が揃っている場合が多く、融通が利きやすく、長年の付き合いによる信頼関係を築きやすいという強みがあります。
トラック車検当日の流れと期間
トラックの稼働を止めないためにも、車検のスケジュールと流れを把握しておくことは非常に重要です。
整備工場に依頼した場合の基本的な流れ
ほとんどの整備工場では、以下の流れで車検が進みます。事前に代車の手配や納期の確認を徹底しましょう。
事前に電話やウェブで予約し、トラックを入庫します。
整備士が法定点検を行い、交換が必要な部品や修理箇所を洗い出します。
整備士が点検結果を元に整備費用の見積もりを提示し、ユーザー（運行管理者など）に整備内容の許可を取ります。
許可を得た内容に基づき整備を実施し、その後、運輸支局などで最終的な車検検査を行います。
車検合格後、トラックが納車され、費用を支払います。（新しい車検証と車検ステッカーの受領）
車検にかかる期間の目安（整備なしの場合と整備ありの場合）
車検の期間は、トラックの大きさや整備が必要な箇所、依頼先によって大きく変わります。
- 最短1日〜2日: 整備箇所が少なく、かつ指定整備工場（自社で検査まで完了できる）に依頼した場合の目安です。
- 3日〜1週間程度: 部品の取り寄せが必要になったり、大掛かりな修理・整備が必要になったりする場合です。特に大型トラックの特殊な部品は時間がかかることがあります。
車検期間中の代車（トラック）はどうする？
代車の有無は、業務継続に直結します。
- 代車の確認: 予約時に必ず、**代車の有無と車種（トン数）**を確認しましょう。
- 大型トラックの代車: 大型トラックの場合、同じ車種の代車がないケースも多いため、事前に運行計画を調整するか、レンタカーの手配も検討に入れる必要があります。
- 費用: 代車費用が無料か有料かも確認しておきましょう。
まとめと次のアクション
この完全マニュアルを通じて、トラック車検の不安は解消されたかと思います。成功の鍵は、次の3点に集約されます。
- 早期行動: 満了日の1ヶ月前には予約・入庫できるよう準備を始め、期限切れリスクをゼロにする。
- 徹底比較: 複数の業者から見積もりを取り、法定費用と整備費用の内訳を比較することで、適正価格を把握し、費用を節約する。
- 日頃の点検: 日々の点検を怠らず、小さな異常を早期に発見・対処することで、車検時の重整備を避ける。
この記事を読んだあなたは、もう車検の「流れに乗る」だけのユーザーではありません。自ら費用と期間をコントロールできる知識を持っています。
次の満了日が迫っている場合は、すぐに行動を開始しましょう。
【次のアクション】
- 車検証を確認: まずは満了日を確認しましょう。
- 地域の専門業者をリストアップ: 地域のトラック専門整備工場やディーラーから3〜4社ピックアップしましょう。
- 見積もり依頼: この記事で学んだ知識を活かし、「今回の車検に必須な整備」と「予防整備」を分けてもらうよう依頼し、比較検討を開始しましょう。
トラックの安全運行は、事業の信頼そのものです。適切な車検で、あなたのビジネスを力強く支え続けてください。
