はじめに
はじめまして。僕はトラックドライバーとして5年間働いてきました。主に中型トラックでの地場配送や中距離の運送を担当し、これまでに何百もの現場を経験してきました。配送業界に身を置く中で、現場のリアルな声や、自分自身が感じたことを誰かに伝えたいと思うようになり、この記事を書くことにしました。
今回のテーマは、「なぜ僕がトラック運転手を辞めたいと思うようになったのか」です。
タイトルだけを見るとネガティブな内容に思われるかもしれませんが、僕の目的は「不満をぶつけること」ではありません。むしろ、これからトラックドライバーを目指す未経験の方々に対して、「理想と現実のギャップ」をできるだけ正確に伝えたいという気持ちで書いています。
どんな仕事にも大変な部分はあります。しかし、それを事前に知っておくことで、納得した上で進路を選ぶことができます。これからお話しする内容が、皆さんの判断材料のひとつになれば幸いです。
トラックドライバーの魅力と始めたきっかけ
トラックドライバーという職業に対して、多くの人が「大変そう」「きつい仕事」というイメージを持っているかもしれません。実際、簡単な仕事ではありません。ただし、僕がこの仕事を選んだのは、明確な理由と魅力を感じていたからです。
まずひとつは、「自由に近い働き方ができる」という点です。もちろん勤務時間や納品の時間指定はありますが、基本的には一人でトラックに乗り、ルートもある程度自分の裁量で決めることができます。人間関係に煩わされず、黙々と仕事に集中できる環境は、当時の自分には非常に魅力的でした。
次に、求人の多さと安定性です。未経験からでも始められる求人が多く、資格支援制度を設けている会社も珍しくありません。実際、僕も最初は普通免許だけで応募し、入社後に中型免許を取得しました。
そしてなにより、運転が好きだったこと。学生時代から長距離ドライブが好きで、知らない道を走ることにワクワクしていました。「好きなことを仕事にしたい」と考える人にとって、トラックドライバーは現実的な選択肢のひとつだったのです。
こうした前向きな理由でこの仕事を始めた僕ですが、5年が経った今、「辞めたい」と感じるようになったのもまた事実です。次の章では、その理由について、現場のリアルを包み隠さずお話ししていきます。
辞めたいと思うようになった理由
トラックドライバーとして5年間働いてきた中で、いくつものやりがいを感じてきました。しかし同時に、「これは長く続けるのが難しいかもしれない」と感じさせる現実にも何度も直面しました。この章では、僕が辞めたいと思うようになった主な理由を4つに分けて紹介します。
長時間労働と不規則な生活
最も大きな理由の一つは、拘束時間の長さです。トラックドライバーの勤務時間は「労働時間」だけでなく、「待機時間」や「移動時間」など、すべて含めて1日の拘束時間が非常に長くなることが多いです。ときには14時間以上に及ぶ日もあり、生活リズムは乱れがちになります。
また、深夜帯や早朝の業務も多く、睡眠時間が一定しないという問題もあります。慣れるまではかなり体に負担がかかりますし、慣れた後も油断すれば体調を崩す危険があります。特に年齢を重ねるにつれて、この不規則さは深刻な問題になっていきます。
体力的・精神的な負担
トラックドライバーは単に「運転するだけ」の仕事ではありません。積み下ろし作業がある場合、重い荷物を何十回も運ぶことになります。中腰の姿勢や階段の昇降も多く、腰痛や膝の痛みを抱えるドライバーは少なくありません。
また、運転中は常に事故のリスクと隣り合わせです。高速道路や都市部の混雑した道路、狭い搬入路など、高い集中力を長時間維持する必要があります。精神的なプレッシャーは想像以上で、気を抜いた一瞬が命取りになることもあります。
社会的な評価や将来性への不安
個人的に意外だったのが、社会的な評価の低さです。人々の生活を支える重要なインフラであるにも関わらず、トラックドライバーは「誰にでもできる仕事」「替えのきく仕事」と見なされがちです。努力しても報われにくいという感覚を持つことが多く、モチベーションを保つのが難しい時期もありました。
さらに、ドライバーとしてのキャリアアップの道は限られており、「この先どう成長していくのか」「10年後、20年後はどうなっているのか」といった将来設計の難しさも感じるようになりました。
法律や規制の厳格化
近年、ドライバー業界は「働き方改革」の影響を大きく受けています。たとえば「2024年問題」に代表されるように、労働時間の上限が厳しく制限されるようになりました。一見すると良いことのように思えますが、現場の実態と法律のズレが多く、結果として現場にしわ寄せが来るケースもあります。
「守るべきルール」と「求められる納期」の間で板挟みになるような状況は、非常にストレスフルです。現場と制度がかみ合わない中で、疲弊していくドライバーも少なくありません。
ここまでが、僕がトラックドライバーを辞めたいと思うようになった主な理由です。
しかしすべてがネガティブなわけではありません。次の章では、現在もこの仕事を続けている人たちがどのような工夫をしているのかについてご紹介します。
続けている人がいる理由とその工夫
ここまでお読みいただいた方は、「そんなに大変なら、どうして今もトラックドライバーとして働いている人がいるのか?」と疑問に思われたかもしれません。実際、業界には長年この仕事を続けているベテランも多くいますし、僕自身も5年間続けてこられた理由があります。
その答えは一言で言えば、**「工夫次第で改善できる部分があるから」**です。
自分に合った働き方を見つける
トラックドライバーといっても、働き方はさまざまです。長距離、地場(近距離)、夜勤、日勤、ルート配送、宅配、引っ越しなど、多岐にわたります。自分の体力や生活リズムに合った業務を選ぶことで、負担を大きく減らすことができます。
たとえば、家庭を持つ人は日勤の地場配送に転職するケースが多いです。給与はやや下がりますが、生活リズムが整い、健康や家族との時間を優先できます。逆に、若くて体力に自信がある人なら、長距離や夜勤で高収入を目指すことも可能です。
無理をしない意識を持つ
ベテランドライバーほど、「無理は続かない」ということをよく理解しています。休憩をしっかり取る、体調が悪いときは早めに申告する、危険な運転は避ける――こうした基本を徹底することが、長く続ける秘訣です。
また、最近ではドライバー向けの健康管理ツールやアプリも増えており、日々の体調をチェックしながら働く人も増えています。業界全体で少しずつ「健康に働く」という意識が広まってきているのは、良い傾向だと感じます。
転職ではなく「職場を変える」という選択肢
「もう無理だ」と思ったときに、完全にこの仕事を辞めてしまう前に、「職場(会社)を変える」という選択肢もあります。労働環境や待遇は、会社によって本当に大きく異なります。
実際、僕の知人の中にも「前の会社では地獄のようだったけど、今はホワイト企業で快適に働けている」という人もいます。同じ仕事でも、どこで・どう働くかによって満足度はまるで違うのです。
このように、トラックドライバーとしての仕事には大変なこともありますが、それを上手に乗り越えて働き続けている人たちもたくさんいます。
次は、未経験からこの仕事を目指すあなたへ、僕からの率直なアドバイスをお伝えします。
トラックドライバーを目指す人へのアドバイス
ここまでお読みいただいた方の中には、「それでも自分はトラックドライバーになりたい」と思っている方もいると思います。そうした方へ、実際に経験してきた立場から、いくつかのアドバイスをお伝えします。
覚悟すべき現実がある
まず大前提として、この仕事は楽ではありません。体力的・精神的な負荷、長時間労働、不規則な生活、そして社会的な評価など、覚悟しておくべき課題は多くあります。「運転が好きだから大丈夫だろう」と軽く考えていると、想像以上にギャップに苦しむかもしれません。
しかし、その現実を理解した上で、しっかりと準備をし、自分に合った働き方を選ぶことができれば、やりがいのある職業でもあります。逆に、何も知らずに飛び込むと後悔する可能性が高いでしょう。
向いている人の特徴
個人的な見解になりますが、以下のような人はトラックドライバーに向いていると感じます。
- 一人で黙々と作業するのが好きな人
- 決められたルールを守るのが得意な人
- 身体を動かすのが苦にならない人
- 変化に柔軟に対応できる人
また、多少のトラブル(納品先での待機、渋滞、積み下ろしのトラブルなど)にも動じず、冷静に対応できる性格であれば、ストレスを最小限に抑えながら働けるはずです。
入る前に確認しておきたいポイント
未経験からこの業界に入る前には、以下の点をしっかり確認しておくことをおすすめします。
- 勤務時間・拘束時間の実態(シフト制か、残業の有無など)
- 積み下ろしの有無と内容(手積みか、フォークリフト使用か)
- 配属される車両の種類(中型か大型か、冷蔵車かウイング車か)
- 担当エリアや距離(地場か長距離か)
- 教育・研修体制の充実度(未経験者に優しいかどうか)
これらは求人票だけではわかりにくい部分も多いため、可能であれば面接時にしっかり質問したり、現場見学をさせてもらうと良いでしょう。
では最後に、この記事のまとめに入ります。
まとめ
トラックドライバーという仕事は、世の中の物流を支える大切な職業です。僕自身、この仕事に誇りを持ってきましたし、多くの学びや経験を得ることができました。
しかし同時に、現実的な厳しさや不満を感じることも多く、今では「この仕事を続けるかどうか」を真剣に考えるようになっています。この記事では、そんな僕の本音を、できる限り客観的かつ正直にお伝えしました。
未経験からトラックドライバーを目指す皆さんには、ただ「大変だ」と伝えたいのではなく、**「正しい情報をもとに、自分に合った選択をしてほしい」**という思いがあります。理想と現実のギャップを理解したうえでそれでも挑戦したいと思えるなら、この仕事はきっと、あなたにとって価値あるキャリアになるはずです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。この記事が、あなたの進路を考える際の一助になれば幸いです。