はじめに:なぜ今、18歳からトラック運転手を目指すべきか
日本の物流を支えるトラックドライバーは、常に社会の重要なインフラを担っています。しかし、業界全体でドライバーの高齢化が進み、若手人材の確保が急務となっています。
このような背景から2017年に新設されたのが「準中型免許」です。この免許の最大の特長は、18歳から取得可能であり、高校卒業後すぐにプロのドライバーとして働き始められる点にあります。
早期にキャリアをスタートさせることで、同年代よりも早く安定した収入を得られ、将来的なキャリアアップ(中型・大型免許の取得)への道も開けます。本記事では、トラック運転手を目指す10代・20代の皆さんに、準中型免許のすべてと、その後のキャリアパスを具体的に解説します。
準中型免許とは?基本を徹底解説
新設された準中型免許の定義と特徴
準中型免許は、従来の普通免許(車両総重量5t未満まで)と中型免許(車両総重量8t以上)の間に位置する新しい区分として誕生しました。
免許種別 | 取得可能年齢 | 運転可能な車両総重量 | 運転可能な最大積載量 |
---|---|---|---|
準中型免許 | 18歳以上 | 3.5t以上 7.5t未満 | 4.5t未満 |
普通免許(現行) | 18歳以上 | 3.5t未満 | 2t未満 |
中型免許 | 20歳以上* | 7.5t以上 11t未満 | 4.5t以上 6.5t未満 |
*中型免許は普通・準中型・大型特殊免許のいずれかの取得から通算2年以上の運転経験が必要です。
この免許を取得すれば、高校卒業後の18歳から、多くの運送会社で主力となるサイズのトラックを運転できるようになるのです。
準中型免許で運転できる具体的なトラック
準中型免許で運転できるのは、主に以下のサイズのトラックです。
2トントラック(標準的な車両)
- 宅配便や小口配送の集配車両
- コンビニエンスストアのルート配送車
3トントラック
- アパレルや食品などのルート配送
- 引越し業者の一部車両
4トントラックの一部
- 車両総重量が7.5t未満に収まる一部の小型4t車
特に、私たちの生活に密着した宅配やルート配送の仕事で大きな力を発揮します。多くの求人で見かける「2t・3tドライバー」は、まさに準中型免許が必須となる仕事です。
準中型免許の受験資格
準中型免許の受験資格は非常にシンプルです。
- 年齢:満18歳以上であること
- 視力:両眼で0.8以上、かつ片眼でそれぞれ0.5以上であること(眼鏡等使用可)
- 深視力:三桿法の検査で誤差が2cm以内であること
普通免許と異なり、「運転経験年数」の制限がないため、18歳の誕生日を迎えれば、すぐに教習所に通い始めることができます。
準中型免許の取得方法と費用
準中型免許を取得する2つのルート
準中型免許を取得する方法は、主に「教習所に通う」方法と「一発試験(直接受験)」の2つがあります。
- 指定自動車教習所に通う(一般的・確実)
- 卒業すれば技能試験が免除されるため、最も確実な方法です。
- 所持免許によって教習時間と費用が変わります。
- 運転免許試験場での一発試験(費用を抑えられるが難易度高)
- 教習所に通わず、学科と技能を直接試験場で受験する方法です。
- 費用は大幅に抑えられますが、技能試験の合格率が低く、難易度は非常に高いです。
【ポイント】 多くの人が教習所に通学または合宿で取得します。特に、トラックはMT車が主流のため、MT車での取得をおすすめします。
免許取得にかかる期間と費用相場
所持している免許によって、必要な教習時限と費用が大きく変わります。
所持免許 | 費用相場(通学)* | 期間の目安(最短)* |
---|---|---|
免許なし/原付のみ | 35万円~45万円 | 18日~2ヶ月 |
普通免許MT所持 | 15万円~19万円 | 7日~2週間 |
普通免許AT限定所持 | 17万円~21万円 | 10日~3週間 |
*教習所やプラン(合宿・通学、繁忙期・閑散期)により変動します。別途、仮免許関係手数料(約2,900円)や取得時講習費用が必要になることがあります。
免許取得支援制度を積極的に活用しよう
準中型免許は普通免許と比べて高額ですが、費用負担を軽減する制度があります。
- 企業の「免許取得支援制度」
- 運送会社によっては、入社を前提に準中型免許の取得費用を会社が全額または一部を負担・貸付してくれる制度を設けています。
- 「給料をもらいながら免許を取る」ことが可能になるため、未経験からの転職・就職では最優先で検討すべき制度です。
- 国の「教育訓練給付制度」
- 雇用保険の加入期間などの条件を満たせば、取得費用の最大20%(上限10万円)の給付金を受け取れる場合があります。
準中型免許を活かせる仕事と働き方
未経験者が活躍できる準中型ドライバーの仕事
準中型免許が最も求められるのは、地域に根差したルート配送や集配業務です。これらは「近距離・日帰り」の仕事が中心となるため、未経験者にとって始めやすい仕事です。
職種 | 主な仕事内容 | 働き方の特徴 |
---|---|---|
宅配ドライバー | 営業所から個人宅への荷物の配達・集荷。 | 配送エリアが狭く、走行距離は短め。運転よりも荷扱いスキルが重要。 |
コンビニルート配送 | 決まった時間に、決まった店舗へ商品を配送。 | 決まったルートとスケジュールで、安定して働きやすい。夜間勤務が多い。 |
食品・日用品ルート配送 | 飲食店やスーパーへの食材・日用品の配送。 | ルートが固定され、規則正しい勤務時間になりやすい。 |
引越しドライバー(補助含む) | 引越し荷物の運搬。 | 運転に加え、荷物の積み下ろしや養生作業が主体。体力が必要。 |
準中型ドライバーの平均的な給与・年収
準中型ドライバーの給与は、勤務地や勤務形態(ルート配送か、長距離か)によって異なりますが、未経験スタートの目安は以下の通りです。
項目 | 相場(目安) |
---|---|
平均月収 | 25万円~35万円程度 |
平均年収 | 330万円~450万円程度 |
ただし、深夜・早朝の手当や残業時間、歩合給の有無によって、実際の年収は大きく変動します。特に、都市部の求人や、夜間ルート配送などは高めの給与設定になっている傾向があります。
キャリアをスタートさせる企業の選び方
未経験から始める場合、以下の3点を重視して企業を選びましょう。
- 充実した研修制度の有無:
- 「横乗り研修(先輩のトラックに同乗して実務を学ぶ)」の期間が長い企業は安心です。
- 資格取得支援制度の有無:
- 将来の中型・大型免許取得を支援してくれる企業であれば、費用面で有利にキャリアアップできます。
- 無理のない運行スケジュール:
- 体調管理が重要な仕事のため、安全基準を遵守し、余裕のある運行計画を立てている企業を選びましょう。
将来を見据えたキャリアパス:中型・大型へのステップアップ
中型・大型免許取得へのステップ
準中型免許は、あくまでキャリアの「スタートライン」です。より高収入を目指し、運転できるトラックの種類を増やすためには、中型・大型免許へのステップアップが不可欠です。
免許種別 | 受験資格(準中型免許取得後) | 主に運転するトラック |
---|---|---|
中型免許 | 満20歳以上、かつ運転経験2年以上 | 4tトラック(増トン車含む)、一部のマイクロバス |
大型免許 | 満21歳以上、かつ運転経験3年以上 | 10tトラック、トレーラーヘッド、タンクローリー |
準中型免許を取得し、プロドライバーとして経験を積みながら、次の目標となる免許の取得を目指しましょう。
会社での支援制度を活用して上位免許を目指す
中型・大型免許の取得費用は、普通免許所持者からでも20万円~40万円以上かかります。この費用を自己負担するのは大変です。
そこで活用したいのが、入社した会社の**「免許取得支援制度」**です。
- 全額または一部を会社が負担
- 免許取得期間中も給料を支給
- 取得後の一定期間の勤務を条件に費用を免除
この制度を利用すれば、実質費用ゼロで上位免許を取得し、仕事の幅と年収を一気に広げることが可能です。
大型ドライバーを目指すことで広がる仕事の選択肢と収入アップ
大型免許を取得し、大型ドライバーになれば、主に長距離・幹線輸送の仕事を担当することになります。
大型ドライバーは運転技術や責任の重さから、準中型ドライバーよりも年収が高くなる傾向があります。
ドライバーの区分 | 平均年収(目安) | 業務内容 |
---|---|---|
準中型 | 330万~450万円 | 近距離、ルート配送、集配 |
大型 | 450万~650万円 | 長距離、幹線輸送、特定貨物 |
大型ドライバーは、さらに「牽引免許」「危険物取扱者」などの資格を取得することで、トレーラーや特殊貨物の輸送が可能となり、さらなる高収入を目指すことができます。
まとめ:18歳の今がチャンス!トラック運転手への道を踏み出そう
「準中型免許」の新設により、トラック運転手は18歳から挑戦できるキャリアとなりました。
若くして専門的なスキルを身につけ、早期に安定収入を得られることは、皆さんの人生設計において大きなアドバンテージとなります。免許取得を支援してくれる企業を選べば、費用を気にせず、すぐにでもプロの道へ進むことが可能です。
物流を支えるトラックドライバーは、未来にわたって必要とされ続ける仕事です。
さあ、あなたの18歳からの挑戦を、準中型免許からスタートさせましょう。まずは興味のある企業の求人や、免許取得支援制度について調べてみることから始めてみてください。
